あきらめられない夢に
しかし、よくあの言葉で沢良木が来てくれる気になったものだ。


「それに・・・

お前の誘いだからな」


「それに?」


「なんでもねえよ。

じゃあ、もう配送行くから。

そっちが誘ってきたんだから、帰りが遅かったら承知しねえぞ」


『それに』に続く言葉が小さすぎて全く聞き取れなかったが、とにかく来てくれることになったのだから構わない。

彼女がトラックに乗り込む後ろ姿を眺めながら、僕は拳を握り締め小さくガッツポーズをする。



もし、今の場面を誰かに見られていたら、こちらがデートの誘いでもしていたのかと勘違いされるかもしれない。

いや、そうなったとしても彼女が力尽くでそれを否定し、そして証明してみせるだろう。

その姿を想像したら、なんだか笑えてきてしまった。


「おっと、園木にも今日のことを教えてやらねば」


一応ながらも親友の大切な恋、それを応援してやるのが情けというものだろう。



携帯電話を取り出して青空を眺めながら、僕はアドレス帳から『園木はじめ』を探し出して通話ボタンを押した。
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