あきらめられない夢に
奥では主任が配送先へと届ける商品のリストを並べ、積み込みの準備をしていた。


「本当に良かったんですか」


他のみんなが素早く着替えを済ませて早く帰ろうとしているなかで、僕はその言葉を発した。

主任は動きを止めて、再びプレハブ小屋に緊張の糸が張り詰めようとしたが、それでもこれだけは聞きたかった。


「先方が沢良木を気に入っているというだけで、別に沢良木に持ってこいって言っているわけじゃない。

だから、俺が持っていっても別に支障は全くない。

それに」


まるで煙草の煙を吐き出すように大きく息を吐き、どこか遠くを見つめるような視線。

いつも厳しい主任が、今だけは娘を見守る父親のような顔つきになっていた。


「初めてだからな。

あいつがここに来て、仕事に対して無理ですと言ったのは初めてだったから。

きっと、余程の大事な用事でもあるんだろ」


その言葉に僕の胸がずしりと重くなったような気がした。

大事な用事かは分からないが、今日の沢良木の用事を作ったのは僕なのだ。



きっと沢良木の性格だから、入社したてのころでも音を上げずに仕事をこなしてきたのだろう。

どんなに物量が多くても、どんなに配送ルートがめちゃくちゃでも、どんなに急な仕事が入っても、必ず首を縦に振り、それを受けてきたのだろう。
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