あきらめられない夢に
「うちのクラスに『ごぜやま』なんて、いたっけ?」


「『ごぜやま』じゃなくて、『のちせやま』。

後瀬山有子。

ゆっこのことだよ」


「そういえば、ゆっこってこういう名字だったっけ」


「あだ名で呼んでいたから名簿にフルネームで名前が書いてあると、誰のことか分からなくなるよね。

やっぱり、あだ名で記載すれば良かったかな」


開始の三十分以上も前に僕たちは会場へと到着した。



通っていた高校がすぐ傍にある店を選んだが、こんな店があるということをこのとき初めて知った。

上越から言わせれば高校時代のときからあったというが、高校生が居酒屋に興味を示すはずもない。



とりあえず店の人に席の場所を聞き、店の入口が見えるカウンターに二人で座る。


「つうか、何で俺が出欠と会費の徴収を手伝うの?」


上越からの電話はこのことを伝えるためであり、それに伴い早めに一緒に行こうというものだった。

彼女は隣で微笑みながら、不機嫌そうな僕を宥める。

首を垂れて大きくため息をつきながら、今日の出席者が書かれた名簿をもう一度見つめる。



三十三人いたクラスメートのうち二十一人が出席というのは、卒業して七年が経過している時間を考えれば、かなり高い出席率といっていいだろう。

きっと、幹事の二人は相当に頑張ったのだろう。


「幹事のくせに遅れるなよな、園木のやつ」


頑張ったことは十分に分かる。

それを褒めたいと思っていたところに遅刻とは、相変わらず抜けている奴だ。
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