あきらめられない夢に
熊野街道を走らせ、松阪駅を過ぎてしばらくしたショッピングセンターに待ち合わせ時間よりも十五分ほど早く着いた。

最初はこちらまで迎えに来てくれると言っていたが、津へ行くにはこちらが迎えに行ったほうが効率も良く、彼女にとっても遥かに楽だった。

それでも彼女はなかなか了解をしてくれず、「誘ってくれたのに何もしないのは申し訳ない」という僕の言葉を聞いてようやく首を縦に振ったのだ。



それにしても十五分という時間は車で待つには少しばかり退屈で、ショッピングセンターに入るには短く、今の僕にとっては中途半端な時間だった。


-インターネットとかで友達の名前とか検索したりしなかった?-


不意に上越の言葉が頭の中に甦り、携帯電話を取り出してPCサイトを開いて『上越まくり』と検索欄に打ち込んでみた。

一番上には競艇の公式ホームページが表示されており、どうやら彼女の選手紹介みたいなものが掲載されているらしい。

らしいというのは、そこに載っている数字が僕にとってはまるで理解ができないからである。

しかし、その理解のできない数字が並んでいるページを見ると、本当に彼女は競艇選手になったのだなと改めて実感させられた。



そして、公式ホームページの下には彼女の画像が集められたページが表示されており、その枚数があまりにも多く驚いてしまった。

もしかしたら、彼女は人気があるのか・・・

その画像の多くが活き活きとした表情で写っており、自分が目指していたものになれた彼女は僕の中でより一層輝きを増した。
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