あきらめられない夢に
「お疲れ」


同窓会も無事に終わり、次回の約束を曖昧に交わし、全員が帰路につくのを見守る。

横には完全に酒に酔い潰れた上越と園木が、気持ち良さそうに店の外壁に寄り掛かって眠っていた。


「あんた、幹事じゃないのに大変だったね」


それを見兼ねてか、ゆっこが僕のほうへと寄ってきた。



高校のときと変わっていない。

口は悪いが、周りが凄く見えていて、気配りが上手なのだ。


「宮ノ沢」


小声で呼び掛け、親指で灰皿が置いてある場所を指差した。

その指示に逆らう理由もなく、僕はセブンスターを取り出し、ゆっこはライターを取り出しながら歩いていった。



同窓会の最中でも吸っていなかったわけではないが、煙草はこうして静かに吸うのが好きな僕にはひどく久し振りの一本のような感覚だった。


「知ってたよ。

あんたが上越のこと、好きだったこと。

そして、多分上手くいかなかったことも」


「だろうと思ったよ」


周りが凄く見えていて、気配りが上手。



僕が上越に振られたあと、それまでと変わらぬように接してきてくれた。

それでも、僕はどこかそれに気付いていたのかもしれない。


「そして、今日、必死で高校時代の自分を抑えつけようとしていたこともな」


煙を長く吐き、僕は眠っている上越を見つめる。


ゆっこには何でも僕のことはお見通しのようだ。


「だろうと思ったよ」


煙草を揉み消し、頭の後ろで手を組み、僕は精一杯の強がりを言う。

別に強がらなくてもいいのだが、それでも強がっていたくなった。
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