あきらめられない夢に
ライターを差し出しもう一本勧めてきたが、僕は遠慮する代わりに新しいセブンスターの袋をそのまま渡した。


「今は違う人がいるんだろ?」


「・・・」


「だから、高校時代の自分を抑えつけていた」


「・・・」


「だろうと思ったよ」


笑いながら、先ほどの僕の言葉を真似した。



セブンスターの袋は封を開けずにそのまま自分の鞄に仕舞い、眠っている二人のほうへと戻る。


「だったら、ちゃんと二人きりで想いを伝えな。

園木は私が送っていくよ」


園木の肩を持ち、強引に立たせようとする。


「いいのかよ、旦那さんいるんだろ」


「構わないよ。

男と一緒って言っても、こいつを見たら疑おうとも思わないだろ。

ほら、園木。さっさと帰るぞ」


僕はそれを見ながら「確かにな」と笑いながら呟き、隣でまだ気持ち良さそうに眠っている上越に近づいた。


「じゃあな。煙草は手間賃として貰っておくよ」


ゆっこの後ろ姿を見ながら、僕は上越の荷物を自分の肩へと掛けた。

その後ろ姿がセーラー服姿のときの彼女と重なって見える。

それでも、高校時代の僕はもう出てこようとなどしてこなかった。


「宮ノ沢。あんた、良い男になっていっているよ」


こちらを振り返らず、笑いながら右手を大きく上げて、そのまま立ち去っていった。
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