あきらめられない夢に
「終わった、終わった」


会社へと戻り、倉庫での後始末を終えて、トラックを所定の位置へと戻す。



思い切り背伸びをし、青とオレンジが交じり合っている空へと両手を突き上げる。

夕日の眩しさの割には暑さもそれほどでもなく、九月に入り秋らしさが出てきたというところか。



九月・・・



去年の今頃、僕は以前勤めていた会社を解雇され、路頭に迷ったかのような毎日を過ごしていた。



あれから、一年。



月日が経つのは早く、僕はこうして充実した毎日を過ごしている。

一年前の僕には、想像もつかなかった自分が確かにいる。


「宮ノ沢」


沢良木の声に呼ばれ、トラックの後ろを見る。

ここからでは彼女は見えず、後ろまで足を運ぶと、コンテナの扉が開いていた。

彼女はステップに足を掛け、コンテナに尻をつけてどっかりと座っていた。


「お疲れ。まあ、座れよ」


彼女は隣を掌で叩き、僕はそこに尻をつけて同じ姿勢を取ることにした。



お互い今日の荷物は少なかったようで、いつもよりも早い時間帯だった。

ここで立ち話をしていても、主任に怒鳴られる心配はなさそうだ。


「暑さもかなりマシになってきたな」


悪戯っぽく笑みを浮かべている。

その姿を見ていると、こちらまで笑みを浮かべたくなっていく。


「もう、九月だからな」


ポケットからセブンスターを取り出そうとしたが、さすがにコンテナの中で吸うのはと思い、その行為を誤魔化すように適当に手を動かした。

しかし、彼女はそれに察したようで肘が僕の胸を小突いてきた。

僕は「ちぇ」と舌を鳴らし、拗ねるように唇を尖らせた。
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