あきらめられない夢に
「園木はどうだ?」


さり気なく聞きたいところだったが一瞬間を置いてしまったために、完全に改まった形になってしまった。



失敗してしまったと思い、恐る恐る彼女を向く。

僕の予想とは反し、彼女は顔を僅かにピンク色に染めて下を向いていた。


「そのことだけど」


これも演技なのかと思ったが、これは本当に恥ずかしがっているのだろう。

そう感じたのは、うなじの辺りにそれまで無かった汗が垂れているのを見たからだ。

偉そうに言っているが、ようはただの直感だ。


「・・・白された」


「えっ」


最初の言葉が上手く聞き取れず、ついつい身を乗り出して彼女のほうに耳を傾けた。

彼女は目を大きく見開き、みるみるうちにピンク色の顔が赤色へと変わっていった。


「告白された」


「そう」


連絡先を聞いてから何度か二人で会っているということは、最初の頃は園木の口から聞いていた。

しかし、ここしばらくは何も言ってこなかったので、それきりだと思っていた。

それだけに言葉では冷静を装ったが、内心はかなり驚いている。


「し、しつこいんだよ、あいつ」


アヒルのように唇を尖らせ下を向く彼女の姿は、誰が見ても恥ずかしがっていた。



異性から告白されたことを何事も無かったかのように平然と話すよりは、こうして恥ずかしがっているほうが恋に対して純粋なように感じる。

彼女はそんな純粋な心を持っていて、園木はそういう女性に告白したということが自分の中で嬉しかった。
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