あきらめられない夢に
「俺はいいと思うよ。

他人事だから適当なことを言っているわけじゃない。

あいつは軽い男に見られがちだけど、中身はしっかりしているし、凄く友達想いなんだ」


(だけど、酒癖はちょっと悪いけど)


ゴールデンウィークのときに行われた同窓会のことを思い出したが、そのことは口にしなかった。

僕は園木の親友で、彼の恋を応援しているつもりなのだから。


「お前があいつのことをどう言おうと関係ねえよ。

付き合うかどうかは、俺が決めることだし」


「そうだな」


「でも・・・俺のことを好きでいてくれているのは嬉しい。

誰かに『好き』って面と向かって言われたのは、初めてだったから」


僕とは目を合わせずに、反対側に顔を向けた。



これ以上は僕から何も口にしないでおこう。



瞬時に色々と頭で考えたが、これが僕の出した一番の答えだった。


「あのとき、駐車場で・・・」


彼女は小声で言葉を放った。



それでも僕は口を開かない。


「俺、あのときお前に・・・」


言葉とともに、勢いよくこちらを振り返る。



もうそこまで言葉が出ようとしているところを、何かが邪魔をして出させない。



そんな感じの表情でこちらを見ている。



唇を結び、前を向いてトラックから彼女は飛び降りた。


「何でもない。

さっ、着替えて稽古に行くか」


最後に彼女は僕に何を言おうとしていたのか、今は分からない。

それは何れ分かるのかもしれないし、ずっと分からないままなのかもしれない。

けど、そんなことはどうだっていい。

彼女の表情を見て、そんなこと分からなくてもいいと思えた。
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