あきらめられない夢に
病院に着いたのは日付が変わろうかという夜中だった。



病院の駐車場に車が停まると助手席から飛び出し、明かりが灯っている緊急外来入口へと向かった。


「すみません、上越まくりの家族です。

まくりはどこですか?」


入口を開けて正面のロビーに駆け込み、思い付く言葉をそのまま口に出した。

受付の女性は最初困ったような表情をしたが、すぐに「あっ」と何かを思い出したように呟いた。


「ありがとうございます」


彼女の病室を聞くと、僕は場所も聞かずに指を差された方向へと走り出した。

女性は何かを発しているが、前しか見えていない僕には何も耳に入って来なかった。


「まくりっ」


場所など分かるはずもなかった。



それでも僕は彼女の病室に辿り着き、病室の明かりが点いていることが分かると勢いよくドアを開けた。



白に薄くピンクを塗ったような色の病衣を身に纏った彼女は、ゆっくりとこちらへと振り向いた。

その姿には普段の明るさなどなく、振り向くのにも弱々しかった。


「来てくれたんだ」


すぐにでも消え去りそうな声が聞き慣れていないせいか、僕は生唾を飲み込み立ち尽くしてしまった。


「やっちゃった」


ぎこちなく笑う彼女に対して、僕はどう言葉を掛けていいのだろう。
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