あきらめられない夢に
-10-
いつもは車通りが激しい県道だが、今日はたくさんの人で埋まっている。
ねぶた飾り車がパレードの出番を今か今かと待ちわび、イベント広場では太鼓演奏が鳴り響く。
様々な露店に群がる子供たちに、それを笑顔で見つめる大人たち。
一年のこのとき、伊勢が一つになる
上越が怪我をしてから、一ヶ月が経とうとしていた。
つぐみさんとは変わらずに会ってはいるものの、二人の間にはどこかぎこちない空気が流れていた。
「去年は来なかったから、伊勢まつりに来たのは凄い久し振りだよ」
彼女は「そう」と呟いたあと、いつもと変わらないように話を続けた。
話すことはいつもと変わらないのだが、どこか今までと違うと感じてしまうのは、僕の意識が過剰になってしまっているからなのだろうか。
「まくりちゃんは元気?」
この質問をされるたび、彼女は上越と連絡を取り合っていないのだろうかと思う。
だとしたら、上越がいる場所が病院ということを気にして取らないのか、意識的に取らないのかと考えてしまう。
「痛み自体は無いから、もう少し様子を見てから退院できるって」
とは言うものの僕自身も病院というものに遠慮して、電話は控えてメールでのやり取りになっている。
そのため実際に声を聞いていないので本当に元気になったのか、こちらに気を遣っているのか僕も分からない。
今はただ、上越から送信されてくるメールの文章を信じるしかないと言ったところか。
ねぶた飾り車がパレードの出番を今か今かと待ちわび、イベント広場では太鼓演奏が鳴り響く。
様々な露店に群がる子供たちに、それを笑顔で見つめる大人たち。
一年のこのとき、伊勢が一つになる
上越が怪我をしてから、一ヶ月が経とうとしていた。
つぐみさんとは変わらずに会ってはいるものの、二人の間にはどこかぎこちない空気が流れていた。
「去年は来なかったから、伊勢まつりに来たのは凄い久し振りだよ」
彼女は「そう」と呟いたあと、いつもと変わらないように話を続けた。
話すことはいつもと変わらないのだが、どこか今までと違うと感じてしまうのは、僕の意識が過剰になってしまっているからなのだろうか。
「まくりちゃんは元気?」
この質問をされるたび、彼女は上越と連絡を取り合っていないのだろうかと思う。
だとしたら、上越がいる場所が病院ということを気にして取らないのか、意識的に取らないのかと考えてしまう。
「痛み自体は無いから、もう少し様子を見てから退院できるって」
とは言うものの僕自身も病院というものに遠慮して、電話は控えてメールでのやり取りになっている。
そのため実際に声を聞いていないので本当に元気になったのか、こちらに気を遣っているのか僕も分からない。
今はただ、上越から送信されてくるメールの文章を信じるしかないと言ったところか。