あきらめられない夢に
「退院したらすぐにでも復帰に向けてリハビリを頑張るって、あんな大怪我のあとなのに凄いよね」


「きっと、あなたがいるから頑張れるのよ」


間髪入れずに彼女は何かを呟いたが、群衆の声にかき消されてしまい聞き取れなかった。

もう一度聞こうとしたのだが歩調が少しだけ速くなり、まるで聞かなかったことにでもしてほしいと避けているようだった。


「そういえば、先週会ってきたよ」


その言葉で彼女は立ち止り、ゆっくりと振り向いた。



「変な表現かもしれないけど、やっぱり一緒に話すだけでもオーラみたいなものを感じたよ。

この人があの作品を生み出して、そして、僕の作品の世界を目に見える形にしてくれる。

そう思うだけで、今でも体が震えるよ」


先月、携帯小説サイトの運営部らしき宛てからのメールは、彼女が確認の返信をしてくれたおかげで本物だということが分かった。

つまり、本当にアニメーション監督が僕の作品を映像化したいと言ってくれていたのだ。



もし、確認を怠っていたら、僕はこのうえないチャンスを逃すところだった。



それから何通かメールをやり取りし、その間はアニメーション監督にはサイトが連絡を取ってくれた。

そして、監督の都合に合わせて大阪で落ち合い、顔合わせをする形になった。
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