あきらめられない夢に
泣いている?



彼女の肩が小刻みに震えているのが、そこまで明るくない道でも感じ取ることができる。

この状況で僕は彼女の肩を抱くべきなのか、それともこのまま見つめているだけのほうがいいのか、僕にとってはその選択は究極の選択ともいえるものだった。



そんなことを考えているうちに、彼女はこちらを振り返ってきた。



やはり、彼女の目からは涙が零れていて、その滴が僕の後ろで輝いている祭りの明かりを反射していた。


「ごめんなさい」


彼女はゆっくりと頭を下げた。

まるで金縛りにあったかのように、体が重く、指一本たりとも動かせないようだった。


「凄く嬉しいけど、どうしていいか分からない。

だから・・・ごめんなさい」


「待って」


まるで自分のものではないように重い腕を何とか伸ばし、立ち去ろうとする彼女の手を取った。

お互いの肩が激しく上下し、息が荒くなっている。

何とか落ち着かせようと試みるが、そうすればするほど肩の上下は激しさを増すようだった。


「住之江の病院での二人を見て、私じゃないのかもしれないって・・・

ううん、それはほんの一部であって、本当は・・・」


涙ながらに彼女は僕の手を振り解き、もう一度頭を下げた。


「本当にごめんなさい」


そして、僕の横をすり抜けて、祭りの明かりへと去っていった。



残された僕はそこから一歩も動く気力が残っていないようで、そのまま立ち尽くすしかなかった。



祭りの賑やかな音がさっきよりも更に遠ざかっていくようだった。
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