あきらめられない夢に
「おい、宮ノ沢」


あれから二週間が過ぎ、つぐみさんはアパートには一度も来ていない。

それどころか、僕たちは話すことも会うことすらもしていない。



空を見上げると、あの日の彼女の姿が思い浮かぶ。



何て悲しく、辛そうな表情をしていて、そして、何て弱々しい姿なのだろう。



首を横に振って、無理やりその姿を頭の中から消そうとする。

そんなことを毎日何度も繰り返してばかりだった。


「いい加減にしろ」


「うわっ」


配送が終わり、倉庫に停めたトラックの前輪部分に寄り掛かっていると、強引に僕の視界に沢良木が入ってきた。

その強引さと、あまりにも突然だったので思わず仰け反ってしまい、運転席のドアとタイヤの隙間に頭をぶつけてしまった。


「いってぇ」


大袈裟に痛がって少しは心配させようとしたが、そんなことはお構いなしと沢良木は更に顔を近づけてきた。

背中にはタイヤがあるため僕に逃げ場所などなく、敢え無く捕まってしまった。


「お前がぼんやりとしているから悪いんだろ」


「配送が終わったあとくらい、別にいいじゃん」


仕事のときは何事も無かったかのように、至って普段通りに振舞ってきた。

今だって、これまでと何ら変わりのないやり取りをしているように見えるだろう。


だけど


もしかしたら


病院から帰ってきてあの日までのつぐみさんと、僕は同じことをしているのかもしれない。
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