あきらめられない夢に
あのとき、つぐみさんはこういう気持ちだったのかと思うと、何も言ってあげられなかった自分が情けない。

何もしてあげられなかった自分が憎い。


「お前に何かがあって、そのことが原因で元気が無いのは分かっている」


やはり、あのときの僕が気付いていたように、沢良木にも今の僕が無理をしているということに気付いていたようだ。

気付かれたところで、どうすることもできない。

結局は普段通りに振舞って、心配を掛けないようにすることしかできないのか。


「お前がそういうふうにすると決めたなら、俺は何も言わない。

だけど、それでぎこちないことになるのだけは勘弁だ。

そんなふうになるくらいなら無理やりにでも原因を聞き出して、一緒に考える。

例え、俺が原因であっても」


同じことを言えたなら、僕たち二人は変わっていただろうか。

そう思っても、あのときに戻れない僕にはどうすることもできないのだ。


「お前が考えるって言葉を使うとはな」


「・・・」


「何?」


「これ以上ぎこちなくなるようだったら、さっき言った通り無理やりにでも聞くからな」


下を向き、作り笑いをして誤魔化す。


(無理やり聞き出されるのも、時間の問題だな)


立ち上がり、ズボンのお尻の部分に付いた小石を手で叩き、プレハブ小屋へと歩く。

無理やり聞き出されるまでに僕自身も答えを見つけなければいけない、その思いを心の中の取り出せるところへと仕舞い込んだ。
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