あきらめられない夢に
舞台まで一週間という稽古にも関わらず、それを見つめている僕は全くの上の空状態だった。



稽古が始まる前につぐみさんと目が合ったが、彼女はすぐに目を逸らして離れてしまい声を掛けることができなかった。

まるで今までの出来事が嘘のように、僕たちは余所余所しい関係になってしまったようだ。


「ごめんなさい」


その声に、はっと我に返った。



声の主はつぐみさんで、どうやら何かミスをしたようだ。

例え稽古でも彼女がミスをすることは無いと、以前に団員から聞いていたので凄く珍しいことだった。

しかし、周りの反応や配慮を見る限り、珍しいことが起きたというよりは、何か慣れたような感じだ。

というよりは、慣れてきましたというところか。



どうやら、上の空状態になっているのは僕だけじゃなく、彼女も同じような状態になってしまっているようだ。

それによって、稽古に集中できていないのだろう。



あと一週間というのに、僕たちはこんな状態でいいのだろうか。


いや


いいはずがないと分かっている。

分かっているのだけども、今の二人にはどうすることもできなかった。
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