あきらめられない夢に
ようやくアパートに着くと、駐車場の入口に松葉杖をついた上越が立っていた。

駐車の左右のバランスを考えずに、すぐさま車を停めて小走りで彼女のところへと向かった。


「もう、退院したんだ」


彼女に笑顔は無く、それが怪我のためなのか、それとも他のことで元気が無いのかが僕には分からなかった。

頭の後ろを右手の人差指で軽く掻き、部屋へと案内しようとしたとき、小さなため息が重なった。

このまま口を開くとそれまでもが重なりそうだったので、僕が譲るような格好で口を閉じた。


「沢良木さんから聞いたよ。

最近、宮ノ沢くんが元気無いって」


なるほど


どうやら彼女に笑顔が無いのは、先ほどの後者だったようだ。

つまりは僕のことを心配しているのだろう。



それにしても、沢良木から上越に電話があったとは予想外のことだ。


「お前ら、いつからそんなに仲良しになったんだよ」


笑いながら言ったのだが、それでも彼女の表情は変わらなかった。



空を見上げてみるが、星空はいつもよりも綺麗に見えず、まるで今の二人の沈黙を表しているかのようだった。
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