あきらめられない夢に
文章を何度も打ち直しては消去し、完成してもメールは送信をせずにやはり消去。



そのことを何度も繰り返したのち、結局、つぐみさんにはメールを送らなかった。

心を掴めるような文章を打てるはずもなく、そういうことは意識して打つことではない。

最後にはそう開き直って、携帯電話を閉じた。



大事なのは・・・



今の自分の気持ちを、ありのまま伝えること。



強く胸に刻み込み、午前中のうちに会場入りする。

しかし、昨日のうちに準備をほとんどしたために、稽古以外は何もすることは無かった。

いくら原作者といえど、あまり口出しをしては役者のリズムのようなものを崩すと思い、午前中の稽古に僕は顔を出さないと決めていたので、全くやることも無く外へと出た。



公民館のようなところを借りているため、会場は全面禁煙にしている。

そのため喫煙が許されるのは、外に置いてある自販機の横に灰皿を置いたその一角だけだ。


良い天気だ


秋晴れという言葉に相応しいくらいに空は青く、どこを見渡しても雲一つ見当たらなかった。


「ちょっと、失礼」


空を見上げていると、灰皿を求めてもう一人やってきた。

そこまで邪魔な位置にいるつもりはなかったが、その声に一歩下がり、声の主を見た。
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