あきらめられない夢に
正反対まではいかないものの、こうも性格が違う二人がどうして仲が良くなったのか不思議なものだ。

そして、今でもこうして二人並んで笑いながら煙草を咥えている。

本当に不思議なものだ。


「あのときはジュースだったけど、今じゃ煙草だもんな。

お互い歳を取ったよ」


灰皿に煙草を揉み消し、近くの椅子へと移動して腰を掛ける。

彼女もつられるようにして、横に座ってくる。


「おまけに、地面じゃなくてちゃんと椅子に座っている」


きっと、僕たちはずっとこういう仲なのだろう。

どうやって仲が良くなったかどうかなど、そんなことは関係ない。

性格が違うとか、同じとかも関係ない。



こうしてくだらないことを言っては大笑いできる、そんな二人の友情はこれからも変わらないで続いていくのだろう。


「それで、上越とはちゃんと話をしたのか?」


僕は言葉では何も伝えず、ただ小さく頷いた。

迷いなど無く、真っ直ぐと先を見つめての頷きは、彼女にちゃんと伝わったようだ。


「それならいいんだ。

じゃあ、私は席を外すよ」


ベンチを立ち上がる彼女の「席を外す」という言葉が引っ掛かり、一緒に立ち上がる。

それを彼女は薄ら笑いで見て、会場の前にある公園を顎で指した。


「お前の知り合いだろ?

さっきから公園をうろうろしながらこっちを見ているから、きっとお前と話したいんだろうよ」


公園に目をやる。

そこには見覚えのある人物が、僕たちに背を向けていた。



それは、もしかしたら僕が一番会いたい人物だったかもしれない。


「ありがとう。今日は楽しんでいってくれよ」


彼女はこちらを振り向かずに、右手を上げて会場の中へと入っていった。
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