あきらめられない夢に
しゃがみ込んでいる彼女に、差し伸ばし彼女の返事を待つ。

耳をつんざくような会場の静けさが、僕たちをより一層注目させていた。



差し伸ばした手に温かい感触が伝わる。



その瞬間、僕は彼女を思い切り抱き締めた。



「私も・・・好き・・・好きよ」


ずっと、こうして抱き締めたかった。



もっと早く、こうして抱き締めてあげればよかった。



それでも、彼女の温もりが僕の体に伝わっている。

これで、良かったのかもしれない。


「一緒に歩いてきてくれる?」


「・・・うん」


その後のことは、はっきりと覚えていない。

涙で視界が滲み、スポットライトで真っ白になり、ただ、拍手と歓声に包まれながら、二人は口づけを交わした。
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