あきらめられない夢に
きっと、上越が心配して、九宝さんに僕を励ますように頼んだのだろう。
そうでなければ一度しか会ったことがない男を誘わないだろうし、会うのが二度目の男にあんな言葉を掛けたりはしないだろう。
「頭を上げて」
その言葉にゆっくりと頭を上げると、彼女は体の正面をこちらに向けていた。
顔も視線もこちらに向けられていて、あまりにも真っ直ぐに見つめられているので恥ずかしくなり視線を逸らす。
「確かにつぐみちゃんにここに連れてきてくれと頼まれて、連絡先を教えてもらったのは確かよ。
でも、初めて会ったときからあなたのことが気になっていたことも確かだから」
小さく「えっ」と零れて、彼女のほうに視線を戻す。
今度は逆に彼女が僕から視線を逸らし、なびく髪を撫でていた。
「私も・・・」
途中まで何かを言いかけたところで止めて水面を、いや、水面よりも遠くを見つめていた。
それに合わせて僕も同じように遠くを見つめ、二人の間には静かな水面が奏でる小さな波の音が彩られていた。
そうしている間にファンファーレが鳴り響き、次のレースが始まった。
一マークでは激しい競り合いが展開され、今度は二コースの選手が一コースの選手の内側から抜き去っていった。
「今のは『差し』」
ターンマークを指差す彼女の顔は、いつもの笑顔に戻っていた。
その笑顔を見ると、どこか落ち着いている自分がいることに気付き、それを悟られないように子供のような笑みを作った。
そうでなければ一度しか会ったことがない男を誘わないだろうし、会うのが二度目の男にあんな言葉を掛けたりはしないだろう。
「頭を上げて」
その言葉にゆっくりと頭を上げると、彼女は体の正面をこちらに向けていた。
顔も視線もこちらに向けられていて、あまりにも真っ直ぐに見つめられているので恥ずかしくなり視線を逸らす。
「確かにつぐみちゃんにここに連れてきてくれと頼まれて、連絡先を教えてもらったのは確かよ。
でも、初めて会ったときからあなたのことが気になっていたことも確かだから」
小さく「えっ」と零れて、彼女のほうに視線を戻す。
今度は逆に彼女が僕から視線を逸らし、なびく髪を撫でていた。
「私も・・・」
途中まで何かを言いかけたところで止めて水面を、いや、水面よりも遠くを見つめていた。
それに合わせて僕も同じように遠くを見つめ、二人の間には静かな水面が奏でる小さな波の音が彩られていた。
そうしている間にファンファーレが鳴り響き、次のレースが始まった。
一マークでは激しい競り合いが展開され、今度は二コースの選手が一コースの選手の内側から抜き去っていった。
「今のは『差し』」
ターンマークを指差す彼女の顔は、いつもの笑顔に戻っていた。
その笑顔を見ると、どこか落ち着いている自分がいることに気付き、それを悟られないように子供のような笑みを作った。