あきらめられない夢に
才能が無くても、好きなことを書くのは自由


不意にそう考え、自分が好きなことはこれしかないと気付き、五作目の作品に取りかかったのだ。


「・・・懐かしいな」


もう一度ゆっくりと息を吐き出し、そのまま部屋の床で横になり天井を見つめる。


自分の好きなことはこれしかない


頭の中にあるストーリーを文章にして、自分の世界を創り出すことが小さいときから僕は好きだった。



それは今も変わらない。



あのときは趣味で続けていればいいと割り切り、文学とは何も関わりのない仕事に就いた。

今、仕事を辞めて地元に帰ってきたことがもう一度だけ作家を目指す道に戻るいい機会かもしれない。



けれども、思ってはみたもののやはり行動に映すことは到底できそうにもなかった。



そのとき、携帯電話の着信音が鳴り響いた。

その着信音に驚きながらも、慌てて手に取って画面を開く。


東雲結希(しののめゆうき)


着信を知らせる名前に少しだけ胸が痛くなる。

東京で勤めていた会社で僕が一番慕っていた先輩であり、一番世話をかけた人物だった。
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