あきらめられない夢に
昨日の夜に久しぶりに見た携帯小説サイトがあまりにも懐かしく、今日もまた開いてしまった。

作家メニューにあるファンレターボックスを覗くと、未読のファンレターが三通あることに気付く。

日付は一番古いもので昨年の十月、それから今年の一月、四月となっていた。

そして、それらは何れも同じ作家からのファンレターであり、その差出人が『みつぐ』という作家名だった。


『つぐみ』を一文字ずらして『みつぐ』


まさかと思って言ってみたが、どうやら本当に作家『みつぐ』は目の前にいるつぐみさん本人だったようだ。


「ファンレター・・・読んでいないと思ってた」


口元で両手を合わせて嬉しそうに呟くその姿を見て、今日初めて気付いたという事実を言うべきかどうか悩む。

全国に名高い作家からファンレターの返事が来たような、それくらいの反応を彼女は今している。



けど・・・


「いや、この一年間は全くサイトを開いていなくて、実は今日初めて読んだんです」


そんな彼女だからこそ、嘘はつきたくなかった。



案の定、彼女は少し残念そうな表情へと変わった。

しかし、下を向き「良かった」と聞き違いかと思うほど小さく呟いた。


「それでも、読んでくれたことは確かよね」


彼女は前を向いた。

その瞳はどこかすっきりしたように澄んでいて、広大な大草原か海原を見渡しているようだった。



その瞳に僕は吸い込まれそうになる。

いや、彼女が見渡しているものの一部にでもなって、そのまま吸い込まれても構わないとさえ思えた。
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