あきらめられない夢に

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あまりの早さに僕は逆に戸惑った。



面接を受けてから三十分後に「明後日から来てくれ」と電話に出た瞬間に言われ、思わず「はい」と返事をしてしまった。

それから詳しい時間や、当日に会社が用意してくれるもの、こちらが用意するものだけを伝えられた。


「宮沢(みやざわ)くん、明後日からよろしくな」


面接のときは極道と間違いそうになるほどの強面だった人も、電話で声だけを聞くと人の良いおじさんだった。

思い切り人の名前を間違えているが、やはり強面が頭の中に強く残っており、文句をつけようなどとても思うことができなかった。



地元に帰ってきて一ヶ月。

何はともあれ、ようやく次の職場を手に入れることができたのだ。



面接からの帰り道にたまたま寄った公園のブランコに座り、僕は携帯電話を握り締めて小さくガッツポーズをした。

何かを得ることが、こんなにも嬉しいことだというのを初めて知った。

この公園がもう少し大きく、人が全くいない状態だったら迷わずに叫んでいることだろう。

人に「浮かれている」と言われれば、僕は否定することができずにその言葉を受け入れよう。

それくらい今の僕は浮かれている状態だし、今くらいはそれでもいいと思う。



それでもすぐに気を引き締め、今さっき電話で言われたこちらが用意するものを揃えるために車へと戻り、それらが置いてありそうな店を探すためにナビで検索を始めた。
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