あきらめられない夢に
彼女のメールはいつでも絵文字も顔文字も入っていない、至ってシンプルなものだ。

本人の性格というよりは、ナビの操作にも苦戦していた機械音痴が原因だろう。

それでもこのメールは絵文字などで装飾されていなくとも、どこか温かく感じた。



アドレス帳を開き、彼女に電話を掛ける。

メールで返事をしようと思ったが、その返事を待つ時間が勿体ないと思い電話にすることにした。


「もしもし」


ついさっきまで稽古があり、その稽古が終ってからすぐメールをしたのか彼女の息が上がっていた。


「おめでとう」


僕が何か言葉を発する前に彼女は祝福の言葉をくれ、その言葉はやたらと電話越しに響いてきた。

稽古終わりにしては珍しく静かで、周りには誰もいないようだった。


「ありがとうございます」


短い言葉が続き、その後はなかなか二人から言葉が出てこなかった。

僕は明日のことを伝えるために電話をしたのだが、彼女の声を聞いてそれだけでは物足りずに思ってしまい何か他の話題を作ろうと考えていた。
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