あきらめられない夢に
八時半までに来てくれと言われていたが、僕は会社に八時前に着いた。

遅刻するよりは早めにいったほうがいいと思って家を出たが、予想よりも早く着き過ぎてしまった。



これでは逆に迷惑になるかもしれないと思い、一旦駐車場から出ようとしたところで大きな声で後ろから声を掛けられた。


「宮沢（みやざわ）くん、早いな」


人の名前を平気で間違えることと、このイントネーションは間違いなく面接をしてくれた強面の人だった。

彼は僕を見つけるなり、必要以上に背中を叩いては大声で笑っていた。


「あっ、早いほうがいいと思いまして」


「そうか、そうか。

その心掛けはいいことだ。

今日の仕事が終わってからみんなに紹介しようと思っていたけど、まだ全員いるから今から紹介するよ」


その豪快さに僕は圧倒されてしまい、ただそれに従うことしかできずに自分の正しい名前を言うことができなかった。

とりあえずはこの人の後ろをついていき、プレハブ小屋のような建物の前に着いた。


「課長、何すかそいつ？」


その言葉を目で辿ると、やたらと派手なポニーテールをした女の人がこちらを睨むように見ていた。

ここの会社は強面の人しかいないのかと思わせるほど、この女の人も僕から見れば十分に威圧感があった。


「ああ、今日から新しく入った子だよ。

今から紹介するから、中に入って」


この強面のおじさんは課長だったようで、女の人の質問にさらりと答えてドアを開けた。

女の人は僕の前を通るのと同時に「ふん」とわざとらしく聞こえるように発して、ドアの向こう側へと入っていった。


（俺、大丈夫かな）


そんな不安も過りながらも、一緒になってドアの中へと入った。



すると、先ほどの女の人を含めた六人が一斉にこちらに向き、品定めをするかのように頭から足まで目を細めて見つめてきた。

普通は新入社員が入ると歓迎されるものだと思っていたのだが、どうやらここではそういう雰囲気では無さそうだった。


（大丈夫、大丈夫・・・）


その言葉を胸のなかで繰り返し、大きく深呼吸をした。
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