あきらめられない夢に
次の日、僕は職業安定所にはどうしても行く気になれず、家の中でずっと引き籠っていた。

仕事をしていたときは何もしない日というのがずっと欲しいと思っていたが、実際に何もしない日というものは時間が経つのが遅くて落ち着かない。



待ち合わせの時間より早いが、このまま家で落ち着かずに過ごすよりはマシだろうと待ち合わせの場所に向かうことにした。

待ち合わせの場所といっても家のすぐ近くにあるスーパーで、上越がわざわざ迎えに来てくれるというのだ。

歩いて五分ほどしたところで着き駐車場を見渡してみるが、彼女がどの車に乗っているか知らない僕には見渡してどうにかなるものではないだろう。



すると、いきなり後ろからクラクションを鳴らされて、驚いて後ろを見ると運転席で彼女が笑顔でこちらに手を振っていた。


「何だよ、ビックリするじゃないか」


そう言いながら助手席のドアを開ける。

女性に似合わず大きい車に乗っていて少々驚いたが、そういう時代になったのかと勝手に自分を納得させて座ってシートベルトを締めた。


「ビックリさせたんだから、ビックリしてくれなきゃ困るわよ」


笑いながらハンドルを握る姿を眺めると、まさか高校のときにこんなことが訪れるとは考えもしなかっただろうなと思う。

ましてや、高校三年生の夏の僕にはこんなこと思えるはずもなかった。


「でも、こっちもビックリしたわよ。

待ち合わせの時間に一時間も早く来たから、いないだろうなと思っていたらいるんだもの」


一日中ずっと何もする気が起きなくて、家にいるのが落ち着かなくて早く出たということを言えるはずもなく、僕はただ「ああ」と答えになっていない返事をした。
< 7 / 266 >

この作品をシェア

pagetop