あきらめられない夢に
「ふふん、苦手なのはナビだけなのよ」


自慢げに話す彼女の助手席は、僕の予想に反して快適なものだった。

彼女が待ち合わせ場所に来るまでは、親が幼い子供の運動会か何かを見ているような気持ちで待っていたのだが、どうやらそれは骨折り損となったようだ。

もっとも、本当に危なっかしかったら大変だっただろうから、それはそれで良かったのだが。



子供のように胸を張りながら彼女は店の入口まで歩き、入口の手前でこちらを見た。


「こういう店だけど良かったかしら」


彼女の後ろに建つ店は看板と本日のオススメメニューを書いたホワイトボードを見るに郷土料理を営んでおり、見た目は定食屋のような風貌をしていた。

運転ほどではなかったが、彼女がこういう店を好むことは意外だった。

意外ではあったが彼女との食事であれば、どのような店でも僕は大歓迎であった。


「さあ、入りましょ」


僕の表情を見て嬉しそうに振り返り、店の中へと入っていった。

それを見て、僕も店の中へと足を運んだ。



店の中は老若男女幅広い年齢層の人が賑わっており、それぞれが楽しそうにしていた。


「二人です」


店内を見渡している僕を余所に彼女は店員に声を掛け、空いている席へと案内されようとしていた。

店員と一緒になって空いている席を探している彼女に合わせて僕も席を探そうとすると、いち早く店員が席を見つけ僕たちを案内し始めた。
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