あきらめられない夢に
それからは二人で烏龍茶のグラスで乾杯をし、一口飲んで一息をついた。


「おめでとう」


僕を真正面から見つめる彼女に、僕は視線を少しだけ落とし小さく頷いた。

賑わう店内でもやはり一番落ち着いているようで、彼女の声ははっきりと僕の耳に届いてくる。


「メールでも電話でも伝えたけど、やっぱりこういうことは直接会って伝えたかったから・・・

会ってくれて、ありがとう」


こちらがお礼を言わなければいけないのに、逆に彼女からお礼を言われて僕は先を越されてしまった。


「そんな・・・」


「いいの」


僕の言葉を遮るようにして彼女は口を開き、敢え無く僕は彼女に対してお礼を言う機会を一つ失ってしまった。



それからしばらくしてお互いが注文した料理が一品ずつ届き、「いただきます」と手を合わせながら彼女の笑顔がより一層輝きを増した。


「それで?」


料理を一口食べたところで、彼女は真剣な表情へと変えた。

それを見て思わず僕は背筋を伸ばし、口元をきゅっと引き締めた。
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