あきらめられない夢に
「企業なんて大層なところじゃなく、小さい会社で働いていました。

そこでも失敗ばかりしていて、落ちこぼれて三重に戻ってきました。

こんな落ちこぼれですが、よろしくお願いします」


僕はここで胸を張っていたい。



何に対しても引け目を感じることなく、みんなと笑い合いたい。



そんな思いが、頭で考えるよりも先に口から今の言葉を出させた。

そして、頭を思い切り下げた。



プレハブ小屋には沈黙が流れ、その間も僕は頭を下げたままの状態でいた。

六人が小声で何かを話している声が聞こえる。

それが僕に対しての評価や印象に対してなのかは分からない。

もしそうだとしたら、こんな自己紹介をした僕は六人にとってどういう人物に映ったのだろう。



だけど、そんなことは関係ない。

どういう評価、印象を持たれようとも今の僕はこれであって、違った僕を見せるよりは胸を張れる。


「おい、頭上げな」


目の前に誰かが立ち、その言葉に頭を上げると後頭部に何かが当たりその衝撃でおもわず再び頭を下げてしまった。


「よし、朝礼始めるぞ。

沢良木、そいつの教育係はお前に任せるぞ」


「何で俺がっ」


先ほどプレハブ小屋の前で会った派手なポニーテールの女の人が、僕の目の前にアルミのお菓子箱のようなものを持って立っていた。

どうやらこの人が沢良木さんで、僕の頭に当たったのは彼女が持っている箱のようだ。
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