あきらめられない夢に
「まだ、あだ名が『落ちこぼれ』なの?」


入社初日。

沢良木の付き添いから帰ってきた僕は、あの挨拶もあってかみんなから『落ちこぼれ』と呼ばれるようになっていた。

しかも、ドライバー六人だけでなく、事務員の三人のおばちゃんからも初めてにも関わらずそう呼ばれてしまった。

最初はすぐ終わるだろうと思っていたが、これが予想以上に長く呼ばれ続けて現在に至っているのである。


「そうなんですよね。

それさえ無ければ、正月からこんなに仕事のことでため息をつくこともないのに」


呼ばれ方くらいはどうでもいいのだが、さすがに配達先で「おい、落ちこぼれ」と大声で呼ばれると恥ずかしい。

自分自身でしたあの挨拶が今となっては憎い。

しかし、あれがなければこれほど皆と馴染んではいなかったのかもしれない。

そう考えると複雑な思いで、白い息でため息をまた一つ作ってしまう。


「最近じゃ事務員のおばちゃんなんか、略して『おち』くんって呼ぶようになってきましたからね。

それじゃ俺は宮ノ沢じゃなくて、越智って名前みたいじゃないですか」


彼女はその言葉が可笑しかったのか、面白おかしく笑っていた。

それを見てわざとらしく不機嫌そうな表情をしても、彼女は変わらずに笑い続けた。
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