あきらめられない夢に
僕の積み込み中に彼女は色んなことを話してくれた。



実は彼女は桑名市出身で、現在はこっちで一人暮らしをしているということを初めて知った。



そして、この二日間で母親に会いに桑名に行ったこと。



好きなプロ野球チームと選手の話。



入社当初は仕事のことと怒鳴ることしか僕に対して口を開かなかった彼女だが、こうして話してみると意外と話は合うようだった。


「俺、ここに来てまだ三ヶ月くらいしか経っていないけど、ここに来て良かったよ。

みんな良い人だし、沢良木ともこうして話ができるようになったし」


彼女はその言葉に少しだけ照れくさそうに表情を崩し、「馬鹿野郎」と呟き視線を若干下へと移した。

その姿が仕事のときの彼女と正反対でこちらも照れくさくなってしまい、同じように視線を下に移した。


「恥ずかしがるなら言うなよ」


彼女は唇をきゅっと尖らせてアヒルのようにしたので、僕はそれを見て思わず笑ってしまった。

彼女はそれを見て、顔を赤くしながらこちらに身を乗り出した。
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