あきらめられない夢に
僕の足が動くようになったのは何十秒かして、倉庫の奥から物音とともに主任が顔を出したときだった。


「主任、いたんですか」


主任は大きくため息をつき、その場にあった椅子に座り込んだ。

そして、顎で僕の荷物を差し、積み込みの続きを指示した。

主任は今のやり取りを全て聞いていたのだろうかと考えていると、積み込みに集中できる気などしなかった。


「あいつの言葉な、あいつが身をもって知ったことなんだよ」


振り返ると、窓の外のどこか遠くを見つめながら主任は話していた。

その言葉に手を止めようとするとすぐに視線をこちらに戻し、また手を動かして耳だけ主任に傾けた。


「俺の口からいくら聞いても意味なんかない。あいつからちゃんと聞いてこい」


明日の積み込みリストを僕の手からはぎ取り、頭を掻きながら主任は僕のトラックの積み込みを始めた。
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