あきらめられない夢に
「二十歳の誕生日に鏡に映った自分を見たんだ。

『誰だよ、こいつ』って思ったよ。

自分なのに自分じゃないみたいでさ。

それで気付いた。

俺は俺自身で変わらなくちゃいけない、このままでは駄目なんだって。

それで何かを始めようとぶらぶらしていたら、団のおっさんが配達先に積み荷を降ろしているのを見て直談判したんだよ、『俺を働かせてくれ』ってな感じで。

今、思うと相当馬鹿げているよな。

でも、あのときは本気だった。

だから、団のおっさんも助手席に乗せて、この会社に連れてきてくれたんだと思う」


「・・・」


「何か言えよ。

普通に考えて二十歳の女をトラックの助手席に乗せて連れまわすなんて、あのおっさんも相当馬鹿げているだろ。

でも、俺の本気に団のおっさんは本気で応えてくれたんだ」


彼女の目が輝きを取り戻し、笑顔でこちらに振り返ってきた。

そのまま僕の右肩を左手で叩き、立ち上がり思い切り背伸びをした。

その手の先の広がる闇に包まれそうな空は、眩いばかりの星空に変わろうとしていた。


「お前がどういう理由で自分を変えたいのかは知らない。

だけど」


「俺は自分で自分を変える」


彼女に肩を並べて立ち上がり、前を向いたまま口を開く。

「このっ」と嬉しそうに笑いながら、彼女は僕の脇腹を肘で小突いてきた。

僕も同じようにしてやり返し、二人は笑いながらプレハブ小屋へと戻っていった。
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