あきらめられない夢に
新年最初の仕事が終わったその日の帰り、僕は宇治山田駅近くの書店で本を買った。


自分で自分を変える


沢良木に言ったこの言葉が嘘にならないように、僕なりの決意のようなものだった。



あれから一週間近くが経ち、その本を毎日のように開き、読んではメモを取ることを何度も繰り返している。

今日もいつものように開くと、傍に置いてあった携帯電話が鳴り響いた。

折角、やる気になったところでの着信だったので少しだけ出るのが億劫だったが、あまりにも長い着信だったので仕方なしに手に取った。

画面を見ると上越からで、どうやら一日から参加していたレースが終わったらしい。


「ちょっと、電話はもっと早く出てよ」


こちらが言葉を発する前に、こちらに対しての文句を大声で彼女は言ってきた。

予期せぬ言葉に耳から携帯電話を遠ざけ、逆の手で耳を抑える。

確かに出るのは遅かったが、何もそんなにも怒らなくてもいいだろう。


「お疲れさま」


ここで僕が何かを言い返すと彼女はいつまで経っても本題に入らないだろうから、とりあえず妥協の労いの言葉を彼女に投げ掛けた。

どうやらそれが功を奏したようで、彼女はご機嫌な態度で簡単に許してくれた。

あまりにも機嫌の良さが大きいのが気になり、インターネットで今日のレースの結果を調べてみる。
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