さよならをください
「課題を提出するだけでしょ。

それ出し終わったら、一緒に帰ろうよ。

今日は特別に奢っちゃうよ」


(確か小学校から中学校、高校とよく二人で帰ったっけ)


そういえば、ヒサカはこういうふうにいつも笑っていた。

一緒に帰れば、機嫌のいいどちらかがジュースか何かを奢っていて、二人とも機嫌がいいときは奢り合いっこをしていた。

結局、お互いが相手の料金を払っているのだから意味はないのだが、それでも笑いながらよくやったものだ。


「分かったよ」


その光景が懐かしくなり、了解する。

もちろん、それを見抜かれないように面倒くさそうなフリをしながら。


「ふふうん、嬉しいくせに」


まるでスキップでもしているかのように軽い足取りで自分の席へと戻っていく。

見抜かれてはいたが、嬉しそうなヒサカを見て悪い気はしなかった。

目の前の課題を早いところ終わらせて、ヒサカとの帰り道をもう一度しよう。
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