さよならをください
-好きだ-


高校三年生のとき、僕はキミジマ先生が好きだった。

どちらかが想いを告げたわけでもなく、気が付いたら人の目を避けるようにして放課後に二人で資料室で会うようになっていった。



そして



この扉を開ければ、その関係が終わる。



そう、この日に僕たち二人の関係が終わり、あまりの失意でそのあとのヒサカとの約束に行かなかったのだ。

ヒサカとの約束を破ったのはこれが初めてだったが、結局、次の日から卒業まで二人の間で会話と笑顔は無くなってしまった。



扉を開けることを拒めるものなら、拒みたい。



この扉を開ければ、僕にとっては辛いことばかりが待ち受けているのだ。



それならば、このまま扉を開けずにヒサカのところへと行ってしまえば、辛い想いは一つだけで済む。

どうせ、叶わない恋ならば、今日一日しか時間のない僕には・・・



ドアノブに手を掛ける。



このあと、辛いことが待ち受けていても構わない。



今のこの気持ちを無下になどできないし、自分の過去をこんな形で変えたくない。
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