さよならをください
唇が離れたとき、僕は違う涙を流した。


(この歌だ・・・)


振り返り、今度は僕からゆっくりと遠ざかる彼女が口ずさむ歌こそ、僕がもう一度聴きたいと思っていた歌だった。



窓の外に広がる景色、窓から入ってくる秋の風と、夕焼けの陽射し。



そして



今、目の前にいる好きな人と、その人が口ずさむ歌を胸にしっかりと刻もう。



例え、どんなに便利な時代になっても、人の記憶のなかの情景は映し出されることはないのだから。
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