愛してるよ、何よりも
合コン

「「かんぱーい」」



勢いよく店内に響く声とともに鈍いガラスの音がした。


タバコの染みついた匂いとガヤガヤとうるさい空間は、この場所特有のものだ。



「まずは、自己紹介からいくよー!!」



なんて、声をあげたのは私の斜め前に座る、見た目からしてチャラそうな男性。


うわー、かなり軽そう。と言うより、この人絶対遊び人だ。

茶髪の髪の毛を無造作に遊ばせていて、レンズの入っていない黒縁メガネをかけてるその男性は、仕切りも上手だし場慣れしてる感たっぷりだ。


絶対この人、合コン慣れしてる。



「じゃあ、まずは俺からね!」


あぁ、早く終わってくれないかな…。こんなところにいるくらいなら会社で仕事してたほうがよっぽどいいよ。


はぁー。さっきから溜息しかでない。



何故こうなったか、ことの発端は遡ること一時間前。



*******




「お願い!美桜~今日の合コンすっごくいけてるんだって!!」



ロッカールームで両手を合わせながら言ってきたのは同僚の夢子。


彼女は名前通りのドリーマーだ。本当に合コンが大好きで、週に3回は必ず行くらしい。


いつも、『いつか王子様が迎えに来てくれる』なんて言って、合コンに行っては失敗を繰り返している。



「もう、本当に嫌だ!」



一方、私はそういったことが苦手で、就職の面接とかプレゼンの発表でさえ緊張するのに合コンなんてとんでもない。


極度の人見知りだし、口下手だし。知らない人と和気あいあいとその場を楽しむなんて、できっこない。



「お願い!本当に今日だけ!今日だけだから!美桜だけが頼りなの!」


一生懸命にそんなお願いされたら、優柔不断な性格の私は強く断れなくて。


今日だけだし…いいか。



「今日、一回だけだからね」



そう言っちゃったんだよね。  



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