愛してるよ、何よりも

そんな経緯で、夢子に連れてこられた居酒屋で合コン中ってわけだ。



もう、早く終わってよ…。座ってるだけでも苦痛になってきた。



そればかりを祈る私とは逆にみんなこの場をとても楽しんでる。


今日初めて知り合った人たちなのに、そんなに打ち解けられる夢子達がちょっとうらやましい。



私なんて、自己紹介どころか挨拶さえもまともにできない。




「美桜ちゃんってさ、すげー俺のタイプ」



「ありがとうごさいます…」




御世辞だとわかるその言葉に、苦笑いで返すのが今の私の精一杯。



誰とも打ち解けられないせいかお酒がよく進む。



この場だけ簡単に会話をすればすむことって思っても、人見知りの私にはそれだけでもハードルが高い。




だから『これ以上話しかけないで』と心の中で繰り返して、すぐ空になってしまうビールジョキとにらめっこしてる状態がもう二十分は続いていた。



「ってかさ、そっち一人足りなくない?」



やっと中盤に差し掛かったところで、あれ?っというような表情とともに夢子がそんな言葉を発する。



「あー、今日一人遅れてくるって言ってなかったけ?」



「やだー、もう聞いてないよー?」



驚くほど甘えた声で返事を返す夢子に私は唖然とした。



夢子は私の斜め前に座るさっき張り切って自己紹介とか言ってたいたチャラチャラした男性が気に入ったらしい。



4対4だと聞かされて始まった合コンだったけど、最初から一人足りてないのは挨拶を交わした時に一目瞭然だった。



相手側の男性は見る限りみんな本当にチャラチャラしてて、本当に社会人なのか疑ってしまうくらいだ。


こんなのばかり相手にしてたら、王子様なんていつになっても現れないよ…。夢子。


私は夢子を見ながら、そんな風に思った。



最初の席順なんてあってなかったようにみんなお目当ての人の隣に座っている。



合コン開始から約四十分。段々酔いが回って気分が最高潮に達してきたころ。




「遅れてごめん」





その場の空気を裂くように一人の男性がこちらにやってきた。





「遅いぞ!」




反射的に声がした方に顔を向けると、その瞬間あまりの驚きに私一人だけ時が止まったように固まってしまった。



心臓だけが静かにドクドクと大きく鳴り始める。



えっ…?


嘘っ……。


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