愛してるよ、何よりも
高校生の時
バタン。
お風呂場の扉を開けると湯気が立っていた。
きっとお母さんが、私が着く頃を見計らって沸かしておいてくれたんだ。
右足からゆっくりと湯船に浸かると、全身に震えるほどの温かさが広がった。
すごく温かい。お湯も、お母さんの気持ちも。
全部がすごく、すごく温かい。
幸せだな……。
お風呂の換気窓から、夕方近くの独特な色合いをした空の色が見えた。
薄暗い灰色をした空は今の私の心によく似てると思った。
はぁー…。そんな空を眺めながら私はため息を吐きだす。
まさか麗斗に会うなんて思ってもみなかった。
沈めた腕を上にあげると、チャポンと湯船の中のお湯が揺れる。
何で会っちゃったんだろう…。
お湯で張り付いた前髪を整えようと、沈めた腕を上にあげると、湯船の中のお湯が音を立てて揺れた。
会ってしまったら、嫌でも思い出してしまう。
私が彼にされたことを。
波打つ湯船を見つめながら、私は回想にふけり始めた。