愛してるよ、何よりも
ドクン、ドクン。
心臓の音は増す一方だ。瞬きを忘れるほど、私は男性を凝視してしまった。
間違いない…この人。
「初めまして。桐生麗斗(きりゅう かずと)です。よろしく」
再び頭から声が降ってきた瞬間、私は咄嗟に俯いた。
「あれ?美桜ちゃん、顔色悪くない?」
夢子と一緒に座っている男性がそういって私の顔を覗き込む。
顔を見なくても、酷い顔をしてるのは自分でもわかった。
「美桜、顔色悪いよ!」
夢子が心配してくれる声も耳に入らないくらい余裕がない。
「みお…?」
やばい!
気付かれたくない!
「私!トイレ!」
気付かれたくない一心で、私は急いで立ち上がってトイレに駆け込んだ。
「ちょっ!美桜?」
後ろで、夢子の声がしたけど私は振り向かずに一目散にトイレへと向かう。
女性用トイレのドアを開けると、ガクッと膝に力が入らなくなった。
そして、壁を伝ってずるずるとその場にしゃがみこんでしまった。
見なくてもわかるくらいガタガタと身体が震えてる。
どうして?
どうして?
何で?
どんなに心の中で問いかけても、答えはでない。
やっぱり、来るんじゃなかった…。
真っ先に頭に浮かんだのはこの合コンに参加したことの後悔だった。