人生の楽しい終わらせ方
相変わらず、太ももの半分ほどを露出したショートパンツ姿だ。
上が薄手のシャツからニットのパーカーになったって、寒くて当たり前だろう。
変態に変な目で見られたくないならもっと着たらいいのに、と誤解を生みそうなことを思いながら、カナタは後ろ姿を見ていた。
どうやら、鞄に入れていたショールを取りに行ったらしい。
「用意いいね」
「まーね」
それを肩に羽織りながら、サエキがランプの近くに戻ってくる。
だが、さっきまでいたランプを挟んだ反対側には向かわずに、カナタのすぐ隣にすとんと腰を下ろした。
それだけではなく、いそいそと体を寄せてくる。
「こうすれば暖かいもんね」
へっへ、と得意気な顔で言うサエキから、カナタは目をそらした。
腕にぴったりと体をくっつけてくるので、動こうにも動けない。
もっと近寄るのも、わざわざ離れるのも、不自然なように思えた。
サエキがもぞもぞとショールの隙間から手を出す。
いつか彼女が、「人の手触るの、好きなの」と言ったのを、不意に思い出した。
唐突に、投げ出したままだった自分の手を引き寄せる。
前髪を触っただけで、指先を隠すように腕を組むと、サエキがちらりとこっちを見た気がした。
あの時はどうしてされるがままに手を繋いでいたんだったか、忘れてしまった。