人生の楽しい終わらせ方
「それで、決まったんですか、サエキさんの楽しい死に方は」
「んん……あんまり」
「あんなに色々考えてたじゃん」
「だって仮面さんもルーカスさんもデメリットばっかり言ってくるから」
サエキは掲示板やチャットで交流のあるハンドルネームを挙げて、唇を尖らせる。
サエキがスレッドを立ち上げた当初から書き込みをしていた面子で、年齢は恐らく、どちらも三十歳前後だ。
二十歳前後のカナタやサエキよりずいぶん年上だが、そんなことは全く気にせずに付き合いが続いている。
「まったく、ほんとに人を死なす気あんのかな、あの人たちは」
サエキのぼやきがあまりにも独特だったので、カナタは彼女の顔をちらりと見た。
そして、言う。
「案外、自分が死ねなかった言い訳なんじゃない」
サエキは、うぅん、と唸った。
「妥協したくないと思って、色々話聞いて色々考えてたら、わかんなくなっちゃってさ」
以前、どうしてそんなに死に方にこだわるのか、と、サエキに聞いたことがあった。
死ねればなんでもいいじゃないか、自分の死んだあとのことなんか、どうだっていいじゃないかと。
サエキは、こう答えた。