人生の楽しい終わらせ方

「カナ……首、やめ」
「うん?」


しばらくしてサエキが言った言葉に、カナタは小首を傾げた。
お互いの前髪がさらりと混ざり合う。
サエキの目元の赤みが増したようなのが気になって、親指を涙袋に沿わせた。
サエキは、首、と繰り返す。


「手……、」
「……ああ」


カナタは、サエキの頬を覆う自分の手が、つい今まで彼女の後頭部のあたりをうろついていたのに思い当たった。
どうやら気づかないうちに、うなじを指先でまさぐったり、首筋を手のひらでさすったり、やわく絞めるように手を回したりしていたようだ。


「その、く、くすぐったい」
「ごめん」
「カナタ、首好きなの」


思いきり絞め上げたり体重をかけてへし折ったりナイフで色んなところを切り裂いたりするのを想像してました、なんてことはまさか言えなくて、一瞬言葉に迷う。
二秒考えて、言った。


「そうかな。そうかも」
「かもって」


それ以上なにも言わずに、困ったような顔で見上げるサエキを引き寄せた。
耳のすぐ横で名前を呼ぼうとするのを、首の裏に爪を立てて遮る。

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