人生の楽しい終わらせ方
『だって、死に方くらい選びたいじゃない? 生まれ方と、周りの流れは選べないんだから』
それを聞いて、確かに、この子は本気で死のうと思っているのだろう、と思った。
楽に死ねる方法とか、すぐに死ねる方法を探す人は、一度失敗すると次を恐れるようになる。
次も死ねないかもしれない、次もまた苦しいかもしれない。
自死なんていう言い方も広まっているが、自殺は、殺人なのだ。
ろくな準備もせずに死ねるほど簡単ではない。
確実に息の根を止めるには、周到な用意と計画が大事なのだ。
それに加えてサエキは、演出を欲しがっている。
並大抵の覚悟では、成功の見込みはないだろう。
だからこそ、妥協はしたくないという彼女の言葉が、前向きで積極的なものに思えた。
「俺に聞いてほしいって、その話?」
「うん。死に場所のついでに」
隣を歩くサエキが、体を前に折って、下から覗き込んでくる。
黒いアイラインの跳ねた目が、上目で窺ってきた。
それとは目を合わせずに、カナタは、「ふうん……」と鼻を鳴らした。
「うん」
「いい?」
「いいよ」
そう言って、ようやくサエキのほうを見る。
黒目がちの目が、なんの曇りもなく、カナタを見ていた。
「サエキさんの人生の終わらせ方、俺が一緒に探してあげる」
小さな山の麓の、小さな港町。
風の吹かない場所のない、暗い海を臨む場所。
そんな町ではじまったのは、なんとも後ろ向きな探し物だった。