人生の楽しい終わらせ方
海沿いの道を走っていた車がずっと先で曲がって、見えなくなってから少し待って、カナタは地面に降りた。
持ち上げたビニール袋が、かさりと音を立てる。
色の濃い闇夜は、不法侵入常習犯の姿も隠してくれるが、通行人の目も見つけにくくさせていた。
いっそもっと汚ならしくてロマンチックさの微塵もない景色だったら、間違いなく人通りは皆無だったろうに。
Tシャツにパーカー程度じゃ防ぎきれなくなってきた夜更けの寒さに、そわ、と鳥肌が立った。
もう11月に入って3日が経つ。
ずっと会うたびカナタに「そんな格好、寒くないの」の言われてきたサエキも、さすがに少し厚着になってきている。
と言っても上にパーカーを羽織ってニーハイソックスを履いた程度で、相変わらず素足にショートパンツだし、シャツのボタンは寒々しく開いている。
ストールやらブランケットやらを持ってくるくらいなら、もっと暖かい格好をすればいいのに。
幾度となく思いはしたが、口に出すのは一回に止めておいた。
まさか、サエキさんは寒そうにしてるのが可哀想で似合う、と言ったカナタの言葉を、真に受けているわけでもないだろう。