人生の楽しい終わらせ方
自分の死にはまったく遠慮がないくせに、他人が巻き込まれることをやたらと気遣うのが、不思議に思えた。
自分が死んだあとのことなんかどうでもいい、と思えないような生き方をしてきたのに、どうしてそこまで積極的に死にたくなってしまったのだろうか。
一瞬考えそうになって、思考を停止させる。
頭から追い出すように左右に振るかわりに、さりげなく頭上を仰いだ。
「生物毒も強いの多いけどさあ、死んだあとが困るよね。こいつどうしようって」
「あぁ、まあ……そうだね。ほっとくわけにもいかないし、殺すしかないかな」
「かわいそうじゃない、私のために捕まえられて人殺しさせられて、最後には殺されるなんてさ」
「生き物には同情的だね」
「動物は好きだよ。なに考えてるかわからないし」
「なんか飼ってるの」
「いないよ。ペットなんかいたら、気になって自殺なんてできないって」
「そっか」
カナタは階段を三階まで登りきったところで、振り向いて、もう一度上を見上げて、それからサエキを見た。
そして、人差し指を立てるように、上を指差す。
「サエキさん。屋上、行かない?」