人生の楽しい終わらせ方
「そんな死に方、誰にも見つけてもらえないんじゃない」
「うん、別に、理想が叶うなら。私が一番見ててほしい人に見てもらえたら、それでいい。それが叶わないなら、目立って死にたいだけ」
「わがままだね」
「そだよ。冷たい海の上で、私が沈んで見えなくなるまで、一緒にクリオネ眺めててもらうの。それで、ずっと私のこと、忘れさせない」
忘れないでいてほしい、ではなく、忘れさせない、と、サエキは言った。
たいした自信だ。
それとも、一生忘れないでいてくれる相手に、見ていてもらいたいということだろうか。
それができないなら、できるだけたくさんの人に、なんて。
なにを言っているのか、よくわからなかった。
「ねぇ」
「ん?」
「俺が海なら、サエキさんは空かな」
「……それ、髪の色じゃん」
「違うよ。秋の空に似てる」
「変わりやすいって?」
「あぁ、それもあるかな。でも、夕方の」
「夕方?」
カナタが思い浮かべたのは、秋の夕方、山のこっちとあっちで色が違う 、一瞬だけの空だった。
暗い青と、燃えるような赤と、温度の低そうな紫と、白と黒が順番に混ざり合ったような、そんな。