人生の楽しい終わらせ方
10
目覚めたのは、太陽が一番高く昇る頃だった。
コントラストの効いた部屋の中、暗いところで目だけを開ける。
ベッドに日は当たらない。
寝転がったまま見えるのは、温度の高そうな日向と、投げ出された自分の腕だけだ。
細い手首に、まだらに赤いものがこびりついていて、汚らしい。
だるく腕を持ち上げると、その下からタオルが現れた。
シーツが汚れないように気を遣う余裕はあったらしい。
なんだ意外と余裕あったんじゃん、と思いながら、それをゴミ箱のある方向に放り投げた。
痛まないほうの手を突いて、頭を持ち上げる。
変な体勢でねむりこんでしまったみたいで、肩が少し痛かった。
首を左右に振ると、ふらりと一瞬意識が遠のきかける。
タオルについた血の量は、それほど多くなかったはずだ。
深さや長さや出血量は、目が覚めると大抵覚えていない。
血が一度に減るせいで、頭の働きがにぶるのだろうか。